免停は嫌なので違反者講習に極振りしたいと思います。
皆さんは違反者講習というイベントをご存じだろうか。選ぶコースによって様々だが、免停1ヵ月を受講料を払っていただき1日で消化してあげようという心優しい(料金は優しくない)イベントである。いわば違反者への免罪符。
~当日~
僕は江東試験場に着き開口一番「人もいっぱいいて賑やかだし、これから学科試験を受ける人もたくさんいて、なんだかまるで...」
と呟きながら平然を装っていた。自分が違反者だと悟られるのが怖かった。 5階の教室で講習が行われるらしくエレベーターを待っていると、ボストロール似(以下ボストロール)のおじいさんが走りこんできた。その後5階に到着し、いくつか教室を過ぎたあと、突き当りの部屋がそこだった。禍々しいオーラが漏れている。だが、ここまで来たら退がるわけにはいかない。僕は”絶界行(ラストダイブ)”を決意した。中へ足を踏み入れた瞬間、自分の脳裏にある光景が浮かぶ。
「おそらく違反点数を6点に累積してきた者達だ」
「面構えが違う」
こんなに殺伐とした空間に7時間もいられるだろうか。いや常人には不可能だろう。僕の脳内の厚切りジェイソンもきっとこう言うだろう。「Why!? Japanese people!! 絶対取り締まられたことネニモッテルダロ!!」 と。
僕は一瞬の気の緩みが命取りになるなんて思いもせずに呑気に口元を緩めていた。その時だった。
教室の入り口から僕に迫りくるパンチパーマのお爺さん、本能が自分に呼びかける「逃げろ!」と。だが、身体は氷のように動かない。教官もすかさず「止まりなさい!」と数人が抑えにかかる。急に景色がゆっくり流れ始めた。そうか、これが走馬灯ってやつか。僕は目を閉じ、覚悟を決めた。
机&イス「ガタッ!」
お爺さんは僕の隣に鎮座したのだ。景色の速度が元の戻り、教官が「高齢者講習は隣の教室ですよ!」と注意した。僕はパンツの滲み具合を確かめながら視線をホワイトボードに向けた。
教官により大まかな時間割を説明され、納得したものから支払いに行く。支払いは2パターンに分かれており
-
Aパターン…実車体験+シュミレーター+講義+考査(¥13,400)
- Bパターン…交通安全活動+講義+考査(¥9,950)
ここはノータイムでBを選択。
講義編(3時間)
事前に適性検査などの記入すべき書類があるため全員がボールペンを走らせる。
教官の説明を聞き終わってからと注意を促されたのにもかかわらず観月ありさ似(以下観月ありさ)の女性がフライングする(恐らく陽気最速スカーフ持ち)。当然注意されるが、ふてくされた表情で聞く耳を持たない。
教官から休憩の指示が入り10:00教室集合と伝えられた。加えて時間厳守とも...毎年数人指示を守れず、お引き取り願う例があるらしい。
教官の完璧な前フリがあったので1限開始時に観月ありさの姿はなかった。しばらく教官が探し回ったが見つからず、教官は「もう待てない。来ても帰ってもらえ」と怒りを露わにした。その教官の形相は皆にガチンコファイトクラブに似た恐怖を感じさせた。
だがその後、息を荒げながら観月ありさは帰ってきた。観月ありさは「ハァ…ハァ…ロッカーがあるので...駅に行ってました...」と答えた。回答が的外れすぎて、みんな無視してしまった。
無事1限も終了し、2限目の11:00まで10分休憩がとられた。加えて時間厳守とも...毎年数人指示を守れず、お引き取り願う例があるらしい。(確定⭐︎演出)
2限目開始時、パンサー尾形似(以下尾形)の男性の姿が見えなかった。2限連続となるとさすがにシーマン似(以下シーマン)の教官も殺気が漏れていた。気の優しそうな木下ほうか似(以下木下ほうか)の教官も心配そうにしている。
木下ほうか「来ませんねぇ...」
シーマン「なんでいないんだよ。もう受けなくていい!時間はわかってるはずだろ」
木下ほうか「...そうですねぇ...じゃあ、始めちゃいます。教科書のp36を」
挑戦者が現れました
シーマン「おい、お前。もう帰れ。時間守れないなら来なくていい」
尾形「なんでだよ!いいだろ!(講習が)任意だろ!?任意だろ!?」
シーマン「お前のせいでみんなに迷惑かけてんだよ。だから帰れ、もう」
尾形「なんなんだよ!ナンなんだよ!🍛」
僕「(はやぶさの剣でも使っとるんかな...)」
尾形「任意で来てんだから、その言い方はないだろ!?」
木下ほうか「こちらもごめんなさいね。みんな揃ったから早く講習終わらせて昼休憩にしよう!みんなお腹すいたよね!」
僕「(木下ほうか教官が一番マトモやなぁ(フラグ))」
交通安全活動編
僕たちは昼休憩を済ませ、Bパターンの目玉イベント交通安全活動をお手伝いさせていただくことなった。腕章と襷を肩に掛け黄色の旗をもって交差点に出向く。これがすこぶるダサい、恥ずかしい。実働は30分程度だったが、体感時間も30分くらいだった。なぜなら数分経って気づいたが、通行人は僕たちのことを見ていない。もしかしたら江東区の通行人はみんなキセキの世代なのかもしれない。その当時の服装がこちら
実働の30分が経ち、木下ほうか教官と交通安全のことを話し合いながら送迎車を待っていた。
木下ほうか「交差点の事故の6割は交差点なんだよ~」
僕たち「????????????」
木下ほうか「6割っていうのは6%だから大きいよね~」
僕たち「????????????」
木下ほうか「車来たから行こうか」
僕たちは考えることをやめた。
考査編(30分)
この時間に今日学んだこと、気を付けたいことを作文する。20分少々で終わってしまった人が多かったため、違反に関する質問を受け付けた。
違反者A「今日から違反の点数が...(ry
教官「そうです。皆さんの前回の違反は...」
教官「他に質問ある方いますか?」
ボストロール「昨日また違反しちゃったんですけど...」
教官「...」
僕は聞かなかったフリをして時計の針が四時を指すのを静かに待っていた。
お世話になりました。もうお世話にならないように気を付けます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
※この物語はフィクションを含んでいます。記載されている内容のすべてが事実ではありません。ご注意ください。